親鸞聖人ゆかりの寺(萬福寺)
源誓坊覚信上人住職の時、安貞二年(一二四四)親鸞上人この国に遊化し錫(僧侶の杖)
を当寺に留めたり。源誓信心帰依して弟子となり、是より真宗となれり。
この寺を杉坊というは親鸞聖人、遊化の日、斎飯(食事)終わりてその箸を地にさし、「我が法必定末世に流布せんには、この杉箸に枝葉生ずべきにこそ」と誓われけるに、不思議や、 その箸たちまちに芽を出せり。年ふるままに枝葉茂りて大木となり、太さ五抱えもありき。この 因縁によりて杉坊とはいうなり。寛延中、当寺炎上の時、その杉も焼け枯れたれば、焼け残りを掻き集め、一つの倉を作りてこれを収む。古えのおもかげを残すとの心を以て、存古堂と名づく。この堂、今も本堂の傍らにあり。 (甲斐名所図絵より)